みんな大好きおいしいホタテ。国内に流通するホタテのほとんどが北海道産だということは以前お伝えした通り。
特にオホーツク海沿岸は「地蒔き」「桁引き漁」という漁法を使ったホタテの大産地!
というわけで、今回は「桁引き漁」をおこなっているホタテ漁師さんのお仕事を見ていきましょう。
とはいっても、船の上では分業的なところもあるので、今回は共通作業をお伝えしますね〜。
出港前作業。
機関士さんはエンジンを始動し、アイドリング。それ以外の人は八尺網の破れがないか等をチェックして、ホタテ漁船両サイドにセットします。
あたりがまだ暗いうちに出港。操業開始時間から逆算して出港時間が決まります。
この年の漁場は港から東の方角。
毎朝日の出を目指すように船はフルスロットル!約20分ほどで漁場に到着。
漁場に到着。だいたい日の出頃に1回目の八尺網を投入します。鉄の塊の八尺網は、とてもじゃないけど人の力では持てない重さ。写真の星のところを中心にして…
2人で息を合わせてひっくり返すように海中投入。
体のどこかが網に引っかかっていたらヘタすると海中50mぐらいまで一緒に沈んで行くことになるので気を張ります。
どの船に行っても、先輩乗組員から何度も念押しされました。安全が第一です!
網を投げたらしばらく引きます。
ホタテが多く取れる6〜7月ぐらいは約10分。あらかたホタテを取り尽くした漁期の後半(10月頃)は40分近く網を引きます。
網を引き上げる準備。下を覗き込んでクレーンのフックを網に引っ掛けます。
多い時には片網2トン、左右両方で4トン以上のホタテが入る事もあるので、人力では全く歯が立ちません。クレーンの力を使います。
全てのホタテを船の上に空け、次回の投下の準備。クレーンで吊り下げられた鉄の塊はまるで巨大な振り子のよう。
波によって大きく揺れ、時として危険な凶器にもなり得る網。そんな危険を伴う八尺網も、押さえてコントロールするのは人の力です。
足を滑らせると海中転落…でも、漁師さん達はパパパッと動きます。最初はめちゃくちゃ怖かった作業も仕事中はそんな事も言ってられません。
さて、実はここからがメインの仕事!船の上でホタテを選びます。
引き上げられたホタテの山・山・山!
今回は選びやすい、雑把(ざっぱ:ホタテ以外の混ざりもの)の少ないホタテですね。
ちょっと拡大してみましょう。
これがわかりやすい。次と見比べてみよう!
割れのないキレイな貝が「正貝」。
大きさはここでは問いません。殻つきで居酒屋に並んだりもできるので、1番商品価値が高い。もちろんたくさん取れてくれたら嬉しい。
「割れ貝」は加工品に回ります。ホタテ貝柱とか、貝紐とかあるでしょ?あれです。
割れ貝も立派な商品。大事なお金。
次は雑把ね。
いわゆる「ヒトデ」。ヒトデ類はホタテの天敵なので、港まで持ち帰って陸上で処分します。
「オニヤスデ」。漁師さんはこう呼んでたけど、ググっても出てこない。とりあえずヒトデの仲間でしょう。
こいつらは再生能力があるらしく、足の数がまちまち。一言で言うとデカくてキモイ。
「ヨナ」。刺さると痛い。数日間腫れることもある。
「危ないから気をつけろ。」と、何度も教えてもらったけど何度も刺さる。
ヤツらの針は手袋さえ越えてくるからね。
こんな感じで選別。ずっと中腰なので、ホタテ漁師さんは膝や腰を傷めている人が多い。かなりしんどい。
僕の人生の中で、仕事中に本気で「つらくて泣きたい」と思ったのはこれが初めて。
ホタテはダンブル(船倉)の中に放り込む。乗組員総出でポイポイ投げ入れるから、ホタテが宙を舞う。みなさん狙ったところに投げ入れるのはもはや芸術!
割れ貝や雑把はよけておいて、別のコンテナにまとめます。
あとは、その日のノルマまで同じルーティンを繰り返します。早ければ4〜5回転。あまりホタテが取れない時は…取れるまで…
コレ、全部ホタテ。
ホタテ船一隻で1日15〜17トン。多い時には20トン以上になることもある。
居酒屋で殻つきホタテ1枚400〜500円だとして…?(もちろん浜値は1枚500円もしませんよ。)
その日のノルマ分だけ取れたら帰ります。
帰港。港の灯台が見えてきたら
「今日も無事に帰ってきたな」
と安心します。でもまだ油断は禁物。
荷揚げ。
この写真は秋のものなので夕方っぽいけど、6月の最盛期には9時ぐらいにはもう港に帰って来ていることもある。
片付けと翌日の準備までできたらその日のお仕事終了。帰れるのはその日その時の結果しだいだけど、6、7月はお昼にはだいたい家にいました。昼から体が空くのでプライベートも充実!?
いかがでしたか?
大きな危険も伴うホタテ漁師さんのお仕事。あなたが口にするホタテにこんなドラマがあるということを知ってもらえたらありがたいですね〜。