皆さんは普段、「心がけて使っている言葉」、「意識している言葉」、「大切にしている言葉」はありますか?

座右の銘とか、仰々しいものでなくて構いません。あいさつや、ふとした折に使っている言葉でいいです。ちょっと考えてみてください。

考えましたか?ちなみに…

スーパーの店員さん、銭湯の受付の人、あとは職場でも、ちょっとのことでも感謝の気持ちを添え、『ありがとう(ございます)』と口に出すようにしています。

この『ありがとう』という言葉、人間関係を円滑にする上でも、とっても大きな役割を果たしてくれます。

もちろん大人同士の人間関係だけでなく、大人と子どもの関係性、言いかえると親子関係や先生と生徒の関係もつないでくれるステキな言葉です。

僕は身長190cm近い大男なので、初対面の生徒にとっては「威圧感」や「圧迫感」があったようです。「最初は怖い人だと思った」との声もたくさんありました。

そのため、生徒への言葉かけには人一倍気をつけるようにし、生徒とのつながりをふやすためにも、小さなことにも

「ありがとう」

と言うように心掛けていました。場合によっては、

ということをセットで行うこともありました。「ありがとう」を伝える場面をこちらが意図的に作るんです。

数値やデータでは証明できませんが、個人的な感想としては「ありがとう」の言葉を与えた分だけ、次、またこちらの期待に応えようとしてくれたと思います。

子どもを植物に例えると「ありがとう」は『心の栄養』みたいなものですね。

さて、僕は1年半だけ、自分の専門外である野球部の顧問をしたことがあります。ある大会(試合)の時に出した、その日の課題がこれ

(スケッチブック作戦帳です)

何だこりゃ?って選手は思ったと思います。

ですが、チームの切り込み隊長が、使い始め、照れ笑いをしながら他の選手も同調し、気がつくと試合中のベンチに「笑顔」と「センキュー」の言葉が広がります。

様々なアスリートたちが「感謝の気持で…」というコメントを出しています。感謝の気持ちという思想を具体的な行動に落とし込んだのがこの「センキュー」作戦なのです。

この年、それまで勝利から離れていたチームは5年ぶりの公式戦勝利を勝ち取ると、あれよあれよという間に大会を勝ち進み、地区大会優勝、7年ぶりの県大会進出、県大会3位、そして東日本大会ベスト8という快進撃を成し遂げました。

もちろん、「ありがとう」の言葉だけで野球が上手くなるわけではありません。ですが、チームの選手同士…学校の教育活動ですから「子ども同士」の関係性が親和的になれば大きな力を発揮できるという一例なのではないでしょうか?

さて、この「ありがとう」という言葉。僕はなんとなくいい言葉だと思って使っていました。

でも、学んでみるとちゃんとした根拠がある事がわかりました。

『自己有用感』と言う言葉を聞いたことがありますか?

『自己有用感』とは自分が他の人の役に立っているという感覚のこと。

つまり、他の人から「ありがとう」の声かけをしてもらえると『自分が他の人の役に立っている』という気持ちを生み出し、直接的にこの『自己有用感』を高めることにつながります。

内閣府の公表したデータでは、

となっています。もうちょっとわかりやすくするために色をかえると…

こうなります。グラフからも「自己有用感(縦軸)」と「自分自身への満足度(横軸)」の相関関係が見えてきます。

他人からの「ありがとう」という心の栄養で「自己有用感」が高まると、子どもの自分自身への満足感が高くなる。

「どうせ…」「自分なんて…」という子供にさせないためにも、普段からの「ありがとう」が効きそうですよ?

また、同じような『心の栄養』になる言葉も紹介します。

数年前から『アドラー心理学』について教育関係で耳にする機会が増えました。一般向けにもたくさんの関連書物が出版されているこの『アドラー心理学』。

詳細は他に譲るとして、この子育てにおける『アドラー心理学』の中心の柱となっているのは『勇気づけ』という技法です。

この『勇気づけ』と呼ばれる技法にも生かされる言葉が『ありがとう』なんです。

また、『うれしい』や『助かった』なども同様な効果があるとされます。

さあ、あなたの頭の中に浮かんできた言葉の中にこの3つの言葉はありましたか。

あったならOK!なかった人もさっそく今日から、使ってみませんか?

最後にもう一つだけ。これは生徒に助けられたというお話を。

以前、中学2・3年の2年間担当した学年の時でした。その学年は、初めて対面した時から「教師不信」「大人不信」を感じるような学年だったと思います。

僕の教員時代は誰よりも早くに学校に行き、教室の机の落書き消しから1日がスタートしていました。

教室の落書きの内容から生徒の心の動きを読み取るヒントをもらいます。

基本的には落書きは全て消します。最初は全員平等の意識のもと、内容のいかんを問わず、全部キレイにするようにしていました。

しばらく続けていると、ある女子生徒の字と思われるこんな言葉がよく書いてある事に気が付きました。その言葉は…

落書きという表現方法は良くないと思いましたが、この生徒はまわりにプラスのメッセージを発してくれています。

男性教諭から女子生徒に使うと、とんでもない問題を生んでしまうこの言葉。僕は自分が使えないので、この『だいすき』の落書きだけ消さないようにしました。この生徒に『ポジティブスピーカー』の役割を託したわけです。

『だいすき』のメッセージが書かれた生徒の表情やしぐさを観察すると…どうやら効果がありそうな様子。

次第に他の生徒の字でも『だいすき』がポツポツ出てきました。

これだけが原因では決して無いと思いますが、この学年はどんどん角が取れて丸くなり、とてもステキな姿に成長して巣立っていってくれました。

(※テストの時は不正防止のために、落書きは完全に消しました。落書きを助長する意図はありません。いろいろなところに学級経営のヒントがあるよという意味で記事にしました。)

ちょっと長くなりましたね。まとめます。

さて…

見るなと言われると見たくなるのが人間。ごめんね。矛盾するかもしれないけど見てくれてありがとう😊